ここ数年で増えている芸能人の独立発表。
しかし、独立後に前所属事務所とトラブルになるケースも目立ちます。
女優・のんさんや歌手・広瀬香美さんのように、「芸名の使用」を巡って争う事例も少なくありません。
ヴィジュアル系ロックバンドFEST VAINQUEUR(フェスト ヴァンクール)も、独立後に前所属事務所から「バンド名の使用禁止」を迫られ、別名での活動を余儀なくされていました。
バンド側と前事務所側での1年にわたる裁判の結果、東京高等裁判所はバンド側の主張を認め逆転勝訴に。
ヴィジュアル系界隈では前例のなかった裁判の裏側を、バンドメンバーに直接語っていただきました。
もくじ
前所属事務所と「名前」を巡り裁判へ
【FEST VAINQUEUR(フェスト ヴァンクール)】
2010年10月10日HAL、HIROを中心に大阪で結成。
2018年に1年間限定の活動休止を発表。
2019年独立を発表し、同年10月27日より『FV』として活動再開。
2020年7月FEST VAINQUEUR名義でアルバム『ReGENERATION』をリリース。
理由はシンプルで、契約内容に関する僕たち側の不満と、独立して自由に音楽活動したいなって気持ちからです。
独立を考え出したきっかけは、契約内容の見直しや調整ですね。
ちょっとした不満や、僕たち側の要望があって……。
事務所に所属しているメリットは、プロモーション(のバックアップ)やいろんな方のご意見をもらえることですが、メンバーの思ったまま100%で動けるかというとそうじゃないんですよね。
他の方の意見や許可がいるとか、しがらみが出てくるので。
そういうのもあって、10周年に向かって振り返った時に、ここで一区切りして独立して自分たちでやってみたいなと。
僕たち1年間活動休止をしたんですが、そのタイミングと契約解除の申告のタイミングが重なったのもあり、契約解除に至りました。
僕たちがいた事務所はどこと共演NGとかは無かったですが、事務所にいるからこそやらなきゃいけないとか、メンバーも少しは「これどうなんだろうな」って思いながらやっていたこともあったと思います。
逆に受けたくても、この条件では受けてはいけないって案件もいくつかありました。
メンバーは出たいけど、事務所的に出てはいけないってイベントもありましたね。
それでもバンド名にこだわった理由はなんでしょうか?
FEST VAINQUEURというバンド名で活動して今年で10周年になるんですが、この10年いろんなドラマがありました。メンバーの脱退や加入を繰り返して、たくさん音源もリリースして、いろんな会場でライブもして。
それだけ活動してきただけあって、メンバーそれぞれ名前に思い入れがある。
バンド名自体が名刺というか、バンドをやってきた証だと思っています。
まずその気持ちが真ん中にドンとあったんです。
事務所と対立する可能性やリスクも十分に考えましたが、シンプルに「なんで名前を取り上げられるんだろう」と疑問で。
別のバンド名で活動したらいいじゃんって言われるけど、「なんで僕たちがバンド名を諦めて活動しなきゃいけないのか。それでいいのか」って思ったんです。
僕たちが結んだ契約書の中にも、契約期間中の話は書いていたんですが、辞めた後バンド名が使えなくなると明確な条項はありませんでした。
バンド名の商標登録に関しても、前の事務所は取っていなかったので……。
前の事務所は(商標登録の)申請すらしていませんでした。
なので本当に、バンド名を使えなくなる理由がよく分からなくて。
先ほども言った、ど真ん中にある僕たちの譲れない思いを今回の裁判にぶつけて、司法の判決に委ねたいなと思いました。
前事務所と対立しちゃうことにはなったんですが、お互いの主張の喧嘩だけにならないように、ちゃんとした裁判という形で決着を付けようと。
弁護士の先生も同じ気持ちだったので、去年仮処分の申し立てをしたんです。
ここは主張に対立があるところですが、僕たちは明確な条項がないと考えていました。
事務所を辞めると決めて契約書を見返した時に、(契約書って)難しい言葉ばっかりなので、素人じゃ「これってバンド名使えないのかな、どうなんだろう」となってしまって。
それで去年の4月に弁護士の先生のところに相談しに行きました。
弁護士さんは「多分事務所は契約書のココのことを言ってるんだろう」と教えてくれたんですが、条項の書き方がすごく抽象的で曖昧で、具体的には書いていなかったんですね。
商標登録の件も調べてもらいましたが、その時点でもまだ商標登録はされていない状態でした。
約10年も活動していたのに、もし商標登録を済ませたFEST VAINQUEURが出てきていたら、僕たちが「偽物」になってしまっていた。
結局、事務所に契約解除の通知書を送ると同時に、僕が代表してバンド名の商標登録申請をしました。
逆に事務所は翌月の5月くらいに商標登録申請をしていましたね。
そうですね(笑)。多分僕が申請するって思っていなかったはずです。
なぜ契約解除したあとに申請したのかなってよく分からなかったですけど……。
僕からメンバーに、みんな気持ちが一緒ならば相談しに行きたいと打診をしました。
僕も含め、契約書内の単語とか書き方とか、隅々まで理解していない部分があったんです。
もし僕らが間違った解釈で物事を進めていたらいけないと思い、専門家の方に見ていただこうと思った時に出会ったのが弁護士の佐藤先生でした。
前事務所から各会場・関係者に対する「法的措置」も……
【FEST VAINQUEURに関するご報告】みんなから届くメッセージや、ライブ会場に足を運んでくれることが今の僕たちにとって生きる糧となっています。
どんなときも僕たちを支えていてくれてありがとう。必ずこの問題を解決してみんなを安心させたいと思っています。
メンバー一同https://t.co/EMvW1TCuB5 pic.twitter.com/ITAnysaBDn— FEST VAINQUEUR公式(New) (@FESTVAINQUEUR_) December 9, 2019
東京地裁での決定直後の公式ツイート。
バンド側の主張は認められず、東京高裁への抗告となった。
事務所との契約が終わった翌日に独立発表をして、東京・大阪・名古屋でのツアーも同時に発表したんですね。
でもその直後に、事務所から各会場へ「FEST VAINQUEURの公演を行うのであれば中止してください。やるのであれば法的処置を取ります」と、損害賠償を求めるような内容証明が送られてしまったんです。
会場から僕たちに「こんなのが届いたんですけど」と連絡があり、僕たちと事務所の問題なのに周りに迷惑がかかってしまった。
それは僕たちも嫌だったので、別名義で別のバンドという形で活動すればそこの部分には触れないかなと思って、つい最近まで「FV」という名前で活動していました。
東京地裁での判決理由に、メンバー全員納得できなかったんです。
裁判官の方に、「バンド名を変えても従前の認識が今いるファンにも理解できる。芸名を変えても特に問題なく、影響があっても限定的なもの」と言われてしまって。芸名を軽視しているというか。
「それはおかしくない?」って、おかしいことに異議を唱えたかった。だからこそ高等裁判所に上訴しようってなりました。
ファンから署名活動も
【FEST VAINQUEUR完全復活のお知らせ】
東京高等裁判所の判断を受けて、本日7/14から、HAL、GAKU、I’LL、HIROの4名は「FEST VAINQUEUR」としての活動を再開いたします!
今後ともFEST VAINQUEURを宜しくお願いいたします!
メンバー一同https://t.co/ZnJwbGlXKe pic.twitter.com/1lDRw5ZT5N
— FEST VAINQUEUR公式(New) (@FESTVAINQUEUR_) July 14, 2020
東京高裁での判決後の公式ツイート。
先輩や後輩から連絡はあったんですが、やっぱりはじめは「大丈夫?」って心配する声が多くて。
周りからは、事務所とゴタゴタしているな・争っているなって見え方になっていたので……実際争っていたわけですが。
心配してくれる声と、「あんまり権力には逆らわないほうがいいよ」って意見もありました。
そういうアドバイスを自分より歴の長いミュージシャンの方から聞いて、ちょっと日和って揺らぎそうになった時もあるんですよ。
でも、こういった形で名前を奪還することができたので、心が折れそうになった時はあったけど戦い続けてよかったなって思います。
だからファンの皆さんは心配していたと思いますし、(活動休止期間が明けて)FEST VAINQUEURとして戻ってくるのを待っていてくれたわけで、名前が違ってるのを残念に思っている反応は多かったですね。
裁判や現実的な部分を見せることに戸惑いはありましたか?
事情があるとはいっても、そのままではファンの皆さんも納得してくれないし、理由を知りたいという声もあったので、発表することにしました。
FEST VAINQUEURってバンド名は自分が10年間ずっと音楽をやっていく中で付き添ってきたものだし、バンド名が無くなるのは解散に近いくらいの気持ちもありました。
自分の代名詞というか、その看板を背負って今までやってきたわけですし。
例えば本名にしたって、生まれてからずっと名乗ってきたものを急に違う名前にしてくださいって言われても、はいそうですかって言えないじゃないですか。
今まで周りのバンドマンからも、事務所を抜けて曲が使えなくなりましたとか、自分が作った曲なのに使えないとか、そういう話を聞いていました。
昔だったらそういうのが当たり前だったから、「残念だったね」で終わっていたと思うんです。
でも、今似たような問題に直面している人には、僕たちの事例を励みにして「当たり前」という概念を一回崩して考えてみてほしいなと思います。
「FV」名義になった時にファンの皆もためらいがあったと思うけど、それでも支えようとしてくれて署名を集めてくれて、今は取り戻せて良かったなって気持ちでいっぱいです。
無事に名前を取り戻し、FEST VAINQUEUR名義での新アルバムもリリースした彼ら。
8月21日公開の後半インタビューでは、コロナ禍における配信ライブの裏側や、夢に向かって生きていきたい人たちへのメッセージをお送りします!
FEST VAINQUEUR NEW ALBUM配信記念・無観客無料配信ライブが決定!
2018年からの活動休止を経て、ファンとの約束であった2019年10月27日にやむを得ず『FV』名義で『ReBIRTH』公演を開催したFEST VAINQUEUR。
ファンや関係者の声援、署名活動の甲斐あって今年7月14日に完全復活を果たしました。
完全復活に伴い、約1年間温めてきたNEW ALBUM『ReGENERATION』のサブスクリプションサービスによる配信がスタート。
改めてFEST VAINQUEURとして『ReBIRTH』公演を無観客無料配信ライブが開催されます!
◆無観客無料配信ライブ
「FEST VAINQUEUR FREE LIVE 2020『ReBIRTH』in AKABANE ReNY alpha」
【日程】2020年8月21日(金)
【開演】19:30~(予定)
【出演】FEST VAINQUEUR
Vo.HAL / Gt.GAKU / Gt.I’LL / Ba.HIRO / Support Dr.SHO
【視聴方法】
TwitCasting @FESTVAINQUEUR_
https://twitcasting.tv/festvainqueur_ より配信
※スマートフォン・タブレットでのご視聴は事前に『ツイキャス・ビュワー』アプリの取得が必要です。
ツイキャスヘルプ https://twitcasting.tv/helpcenter.php
【録画公開期間】
~2020年8月22(土)23:59
【専用アイテム】
ツイキャス専用アイテム『お茶爆』のお礼
・当日全員集合写真データ1
◆NEW ALBUM『ReGENERATION』
各種サブスクリプションサービスにて全6曲配信中
1.MATRIX
2.O.M.G
3.Shangri-La
4.STELLA
5.ANIMA
6.エンドロール
『ReGENERATION』配信サービス一覧
https://linkco.re/cxvTBuF6
◆アンコール&アフタートーク プレミア配信
【日程】2020年8月21日(金)
【開演】20:45~(予定)
【出演】FEST VAINQUEUR
Vo.HAL / Gt.GAKU / Gt.I’LL / Ba.HIRO / Support Dr.SHO
【視聴方法】
TwitCasting @FESTVAINQUEUR_より配信
※スマートフォン・タブレットでのご視聴は事前に『ツイキャス・ビュワー』アプリの取得が必要です。
ツイキャスヘルプ https://twitcasting.tv/helpcenter.php
【チケット購入URL】
¥1,500(税込)
https://twitcasting.tv/festvainqueur_/shopcart/17003
【録画公開期間】
~2020年9月4(金)23:59
【専用アイテム】
ツイキャス専用アイテム『お茶爆』のお礼
・当日全員集合写真データ2
<取材・文> 倉本菜生
<写真提供> FEST VAINQUEUR
大学院で歴史学を研究しつつフリーライターとして活動中。研究してない研究者代表。
福岡県出身。関西に魂を売ってしまった女。
小難しい話はもちろん、美味しいもの・可愛いもの・キレイなものが好き。
「日本全国、隣町」を掲げるアクティブ人間。