先日ナナミルにて開催情報をお伝えした「盗めるアート展」。
7月10日午前0時から「Same ギャラリー」(東京都品川区)にて開催予定だったものの、定刻前に展示品が盗まれ尽くす事態となりました。
もくじ
「盗めるアート展」いったい何が起こったのか
現場に居合わせたTwitterユーザーたちによると、当日の現場は大混乱を極めたようです。
- 開場の30分前から人が押し寄せる。
- 会場周辺は住宅街。混乱を避けるために、主催者側が少し早めにオープンしようとしたところ、会場内へと人が雪崩れ込む事態に。
- 我先にと盗みを行う人々。
- あまりの騒ぎに警察が出動。
- 時間通り0時に来た人が見たのは、もぬけの殻となった会場だった……。
始まる前からクライマックス!
どんなアートが展示されていたの?
オープン直後に全ての作品が盗まれてしまった「盗めるアート展」。
どんな作品が展示されていたのでしょうか。
レセプションに参加したTwitterユーザーの方から写真を提供していただきました。
このほかにも、「日めくりカレンダーアート」や、「ギャラリーに持ってくる途中で盗まれてしまったアート」など、さまざまな作品が展示されていたようです。
「盗めるアート展」の盗品がメルカリへ
「盗めるアート展」の騒動から約1時間後には、フリマアプリ・メルカリにて「盗品」が続々と転売されました。
なかには2万円以上の高額出品も。
この騒動後に開設されたTwitterアカウント、盗めるアート展泥棒 ではメルカリの転売情報が随時ツイートされています。
盗まれたアートたちを追跡する目録。
情報提供お待ちしております。https://t.co/XbdUOKsKkx#盗めるアート展— 盗めるアート展泥棒 (@artthieves710) July 10, 2020
そして驚くべきことに、メルカリ内では「盗めるアート展」のキーワード・ハッシュタグを使って、偽物や無関係の商品まで出品されている始末。
「盗めるアート展」とは何だったのか?
大混乱と予想外の結果を招いた今回のイベント。
いま一度、その開催趣旨を見てみましょう。
- 守られた展示空間と作品、鑑賞者の関係性を破壊。
- 現代における芸術作品のあり様を違った角度から捉え直す。
本展のポイントは上記2点でした。
ネット上の反応を見てみましょう。
「『盗めるアート展』という企画・概念自体を盗むものだった」
前述したように、メルカリ内にて「盗めるアート展」を謳った偽物の販売や、まったく無関係な商品の出品が続出しています。
今回の騒動をきっかけに付加価値が付いたといえる「盗めるアート展」。
その価値を利用してお金儲けをしようとする出品者(=泥棒)。
実は企画自体が「盗める展示品」だった可能性もありますね……?
「諸々の現象を含めて、『展示』だったのでは」
既存の空間が破壊された結果、来場者は「鑑賞者」ではなく「転売屋」として現れました。
そして人々が暴徒化し、アート作品は「芸術品」ではなく「換金可能な物質」へと変化。
あまりの光景に虚無を感じる人もいれば、転売屋を追跡監視する謎のアカウントも登場。
一連の流れそのものが、インターネットを通じて完成した展示物といえます。
「盗まれたのは私たちの時間」
会場に雪崩れ込む人々の後ろで、入場できず立ちすくんでいた人。
ルールを守って遊びに来たのに、盗むのはおろか作品を見ることすらできなかった人。
さらにその後ろや周りで騒動を見ていた野次馬。
SNSで「盗めるアート展」の騒動を追っていた人。
これを書いている私。
そして今、この記事を読んでいるアナタ。
「盗めるアート展」とは、関わった人すべての時間を盗むものだったのかもしれません。
「盗めるアート展」の今後にも注目
「主催者側の見立てが失敗した」「現代美術の敗北」と、冷静な意見も多い今回のイベント。
このまま一時のコンテンツとして消費されていくのか、はたまたバージョンアップして再開催するのか。
今後について主催者からアナウンスは出ていませんが、ルール強化や会場のキャパ上げなど対策を取って、第2回開催を目指してほしいですね。
大学院で歴史学を研究しつつフリーライターとして活動中。研究してない研究者代表。
福岡県出身。関西に魂を売ってしまった女。
小難しい話はもちろん、美味しいもの・可愛いもの・キレイなものが好き。
「日本全国、隣町」を掲げるアクティブ人間。